11月11日。いいお天気の昨日。
朝まで仕事してた私は昼前に起きて、ベランダでぼ〜っとご飯を食べ音楽を聴いて。
とにかくぼ〜っとおソラとつながっていた。
多分4時間くらいはぼーっとしてた。ら。
急にある女性の顔が浮かんだ。
はっきりそれは『ひろこさん』だ。そして私に『安田さんが』と言っている。
『安田さん』とは私の写真集『FirstTime』の表紙で笑ってるおじいちゃん、だ。
今年ふらりと入った角打ち(かくうち)で出会った、79歳の陽気でオシャレなおじいちゃんだ。
『ひろこさん』っていうのはその角打ち酒屋の、写真が好きなおかあさん。
ふんわり笑う顔が可愛くて優しくて、みんなのアイドルだ。
今年の2月、普段は通らない辺りを仕事帰りにぶらり、角打ちの酒玉を見つけた夕方3時半。
女一人で入って菊水のふなくちを呑んだ。客は一人(笑)
徐々に常連さんが増え、色んなおじさんと仲良くなった。
ワイワイあったかい、そしてどこか品の良い空間。
そこに、脚をけがしてしばらく来れてなかったと云う常連の『安田さん』が来た。
よく笑う、かわいい安田さん。
みんなと仲良しの人気者。
照れながらもクシャリと笑う顔、パシャリと撮った。
それが写真集の表紙。
その後、そのお店には昨日を入れて行ったのは実は4回だけ。
2回目は最初のすぐ2日後。
『お店が取材受けるから、お客さんたくさん居てほしい〜!』
というひろこさんの号令に従って、私も安田さんもその日居たたくさんの常連さんが来た。
3回目は写真展のDMと前に撮った写真をプリントを渡しに3月に。
ちょうど安田さんがいらして、とっても嬉しそうにプリントを持っていってくれた。
『そうか、カメラマン!やっぱりアーティストだったのか!』そう喜んでさ。
安田さんもカメラマンだった話、草間弥生と同じ頃にニューヨークに渡って
写真だアートだ音楽だ、と遊んだ若き日の話をしてくれた。
「絶対写真展にも行くから」と笑って言ってくれた。
安田さんの写真もあった写真展には残念ながら来れなかった。
展示の最終日にお電話が来た。
『インフルエンザに掛かってしまって、どうしても治らなくて伺えそうにない。
本当に申し訳ない。楽しみにしていたのに残念です。』
家電から丁寧にお電話くださった。
『どうもごめんください。』で締めくくったお電話に
安田さんの生きて来た時代や背景を なぜかとても感じたっけ。
4回目は札幌の展示も終えてひと段落の頃、だったろうか。
久々に顔を出したら、最近ちょっと来れてなかったという安田さんがフラリ入って来た。
『私、安田さん10割!』
そう嬉しそうに笑うと、安田さんも「なんか縁有るんだな〜」って
ポテトチップス食べながらいつものように嬉しそうに笑ってた。
その日は50年くらい犬猿の仲の町内の人が来てて
二人で嫌味なんだか褒めてんだか、大人なんだか子供なんだか
かわいい安田さんをまた見てしまったっけ(^_-)
ふふふ、安田さんはポテトチップス好きでね、
あの小さいポテチ1袋、一人で食べちゃうんだ。
そしていつも初めに菊水のふなくちと缶ビール一緒に買って、
交互に呑んじゃうんだよ。
昨日『ひろこさん』に呼ばれた(気のした)私は、写真集を持って角打ちに行った。
なんだか絶対行かなきゃイケナイ、それもこれを安田さんに渡さないとイケナイ、
そうはっきり感じていた。
なぜだかこれを渡したら、安田さんとはそれが最期になるような予感がしたからだ。
店について戸を開ける。
正面にひろこさんが、珍しく大常連のお客さん達と一緒にお酒を呑んでいる。
私を見つけ、ぱ〜っと明るい顔をして。
『サイコさん!お久しぶりじゃないですか、まぁ嬉しい!!』
『ご無沙汰しちゃってました、すいません。旅をし過ぎて東京に全然居なくって。
どこの呑み屋行っても久しぶりって云われちゃうんですよ(笑)』
『おかわりはなく?』
『はい〜、相変わらずです。皆さんお元気ですか?
安田さんは今日とかいらしてました?』
そんな会話と共に、奥にいって缶ビールを買う。
プシュッ!
『来てくれて本当に嬉しいの。
実は私、サイコさんにどうしてもお伝えしたかった事があって。』
そう詰まったひろこさんの顔を見る前に、直感とその場のみんなの空気で悟った。
『そうか安田さん、、、亡くなられたんですね?』
『・・・・・・・』
『献杯!』
お会いした事ある常連さんばかりで今一度、おソラの安田さんと乾杯をした。
『サイコさん、私今日は泣いてもいいかしら?サイコさんに伝えたくて伝えたくて。
亡くなった時にサイコさんのあの写真が浮かんで。ゴールデン街まで行こうかとも考えたんだけど行けなくて。。。あぁ伝えられて本当に良かった。今夜はよく眠れそう。』
このお店の10年以上の角打ちの歴史の中に、私は半年程度。それもたった5回目だ。
でもその場のほとんどの常連さんが安田さんが亡くなったと聞いて、
あの写真を思いだして彩子さんのこと思った、そう言ってくれた。
昨夜はみんなで閉店の8時を過ぎても随分呑んで、たくさん安田さんの話をして
たくさん笑った。たくさん、笑ったよ。
昨日もあの場に安田さんは居たよ。
ちょっと間に合わなかった。
もう一度は会えなかった。
涙、出た。
でも後悔の涙、ではない。
会った時一回一回、安田さんと私は最大限に笑い合った。
だから、後悔の無い『生粋の哀しみ』だ。
『ワタシ、だからなんでもない日のみんな、いつも撮ってるんだ。
いつが最期になったって、私ちゃんと憶えてるよ。
誰が見てもその人らしい顔でその空間に居る、そんななんでもない様な日を残しておくの。』
そう言ったら、みんながとても優しい笑顔で私を見て。
さっきまで泣いた顔恥ずかしいから今日は撮っちゃダメ!なんて言ってたのに。
僕も私も撮っておいてね。ってさ(笑)
今日はお昼間お仕事はお休みさせてもらって、安田さんの想いと過ごしたよ。
ベランダに写真集をおいて目玉焼きを食べる。
『安田さん』と珍しく失敗した『目玉焼き』とベランダに生えてる『万能ネギ』から
想いのままに絵を描いた。
Enyaを聞きながら。
5時間同じ1曲『Book Of Days』だけをリピートで100回は聞きながら(笑)
高校の時から使ってる色鉛筆で、安田さんの想いを描いた。
安田さんが教えてくれたのは『ひとつの魂』の意味
見せてくれたのは異国の世界や美しい女性や大自然
人間の細部や魂の持つ彩
描き終えて
とても満足(^-^)
私達はまた会える。
うん安田さん、また遊ぼうね!
See You !!!!